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ガタリがとめたフランスのテロリズム

最近になって

やっと、

DVDが出たので、

『バーダー・マインホフ』って映画をみた。

 

バーダー・マインホフ 理想の果てに [DVD]/アレクサンドラ・マリア・ララ,モーリッツ・ブライプトロイ,ヨハンナ・ヴォカレク

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爆弾で、銃で、

とにかく人を殺しまくったドイツ赤軍の話。

日本と違って

内ゲバがないのが驚いた。

知らないことが多かったので飽きずにみたれたけど、

ウルリケ・マインホフの人物像は若干リアリティを欠く気が。

テロリズムに入っていく過程が唐突に思えるのと、

監獄で頭がおかしくなっていく過程も

ああ、こういうのよくあるよなって程度。

それはさておき、

映画そのものの話がしたいのではなくて、

ガタリとフランスの武装闘争の話です。

前にこのブログでも何度か紹介していますが、

ドゥルーズとガタリについては、

フランソワ・ドスの『交差的評伝』という評伝が必読文献です。

 

ドゥルーズとガタリ 交差的評伝/フランソワ・ドス

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そこにこんな話がでていたのを思い出したのです。

フランスで、赤い旅団(イタリア)やドイツ赤軍のようなテロリズムが生まれなかったのは、

ガタリがそういう直接的暴力行使に向かいそうな連中につきあってしつこく説得していたからだ

というのです。

「たしかにガタリは、1977年から78年にかけて、イタリアの赤い旅団やドイツの赤軍の行動を公然とは非難しなかった。しかし、この沈黙は、ガタリが当時テロリズムに誘惑されかけていた人々を弾劾するのではなく、そういう選択が他者にとっていかに深刻な結果をもたらすか、そして自らをも毒するにいたるかを説明しながら彼らを思いとどまらせようとしていたこと、そういう隠密行動をとっていたからだと思われる。したがって、ガタリはこの点で大きな役割を演じたのである。とりわけ彼のコンデ通りのアパートは、この頃あらゆるマージナルな運動の活動家が集まるメッカだったこともある」(p.308)。

ジャン・シェノーという人の次の話も引用されています。

「赤い旅団やドイツ赤軍のような武装闘争はフランスでは起きなかったけれど、それは直接的暴力行使に引きつけられていたマージナルな連中やアウトノミアに対してフェリックスが治療的接触をした成果だと思いますね。フェリックスは私にこういう連中と意図的に付き合っているんだと言っていました。火炎瓶を作らせるかわりに、精神分析の寝椅子に導いていたんですよ」(p.308)。

もちろん誇張もあるでしょうが、しかし、全く考えられないことではない。

これはすごいことです。

バーダー・マインホフ(ドイツ赤軍の中心人物だったアンドレアス・バーダーとウルリケ・マインホフの二人の名前をとってこのように言われる)と

ドゥルーズやガタリとの関係はまだあります。

バーダー・マインホフの弁護士だったクラウス・クロワッサンは、1977年に亡命場所を求めてパリに来るのですが、

フランス警察は彼を逮捕。

彼をテロリストの手先として告発していたドイツ当局の送還要求に答えるんですね。

その時、この強制送還に反対する嘆願書に、ドゥルーズとガタリは署名しています。

ドゥルーズは更にガタリと一緒に

クロワッサンの強制送還を批判する

「ヨーロッパを統一する最悪の手段」

という文章も書いています(『狂人の二つの体制 1975-1982』所収)。

 

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クロワッサンは獄中で抹殺されるかもしれない(ドイツ赤軍のメンバーは獄中で自殺しているが、これは当局による暗殺ではないかという説がずっとある)。

またドイツ政府は他国の領土でドイツ警察が思うがままに行動するのを黙認するように各国政府に求めており、非常に高圧的な態度に出ている。

ドゥルーズとガタリはそこで

そういうことを述べています。

この文章は

非常に評価の難しい文章です。

慎重に読むべき文章です。

というのも、

このクロワッサンという人物、

後で

実は東独の秘密警察のスパイであったことが分かるのです。

衝撃的な事実です。

いや、どうなんでしょう。

当時としてはたいして衝撃的ではなかったのか。

よく分かりません。

もちろん、

別にクロワッサンがスパイだったからといって

この文章の主張が過ちだったことになるわけではない。

ドゥルーズの政治文章というのは基本的に原則論なんですね。

西ドイツが法的・警察的・情報操作的なモデルを輸出して、

他国に於ける弾圧の模範的組織者になろうとしている…。

この主張は、クロワッサンがどういう人物であろうと

とりあえずは理解できる主張です。

とはいえ、

たとえばああいう映画を見て、

バーダー・マインホフがどんなことをしていたのかは

きちんと知っておく必要はあると思う。

ああいうタイプの人たちにガタリが働きかけ、

しかもそれに成功していたというのなら、

本当に驚きです。