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キュレーター渡辺真也さんとのUSTトーク告知、そして、マザニエッロとスピノザ

9月に出る本の校正刷り

最初の直しをとりあえず終えて

ほっとしております。

しかし未確定の箇所がまだあり、

実はほっとしてはいられない…。

さて、

明日8月9日19時より

キュレーターの渡辺真也さんとのトークを

Ustreamで放送いたします。

    2011年8月9日(火曜日)19:00~

    Ustトーク:「スピノザの自画像」

    國分功一郎(哲学者) x 渡辺真也 (キュレーター)

    http://www.ustream.tv/channel/ust-talk

渡辺さんとはツイッターで知り合いました。

実はまだ直にお会いしたことはございません!

明日はじめてお会いした、その場面をそのまま放送いたします!

渡辺さんにはツイッターで俺が書き込んでいることに関心をもっていただき、

渡辺さんの活動の資料を送っていただいたり、

俺も著書をお送りしたりと、

すこしずつ交流させていただいていたのですが、

こうして実際にお話しする機会が得られたということで

とても楽しみにしています。

こんなことを話しましょうか、

というメモのようなものを渡辺さんからいただいたのですが、

これがすげーおもしろい!

スピノザの話が絡んでいるんですけど、

俺は全然考えてもなかった話題が満載。

そもそも

「スピノザの自画像」ってタイトル。

これがいいですよね。

もちろん渡辺さんがつけました。

なんと言いますか、

スピノザって、

あんまり自我とか自分って話をしませんね。

『エチカ』によれば

精神は観念の集合だし

身体も硬いものや柔らかいものといった部分の集合です。

ライプニッツみたいに、

精神の器みたいなものを考えない。

けれども、

自我や自分ってものの存在を否定するわけではない。

すると

「スピノザの自画像」を

どう捉えたらいいだろう?

スピノザの遺稿集には名前が書かれていなくて、

彼のイニシャルのみが記されています。

これはスピノザが真理は万人のものであって、

誰かのものではないと固く信じていたということを配慮して

遺稿集の編者が決めたことのようです。

スピノザには自分というものへのこだわりがあまりないように思うんですね。

たとえば、

自分の幼い時の話、

そういう話をスピノザはしなかったんじゃないかと思うんです。

因みにドゥルーズも、

自分の幼少期についてあまり語りません。

自分で「自分はこういう子どもだった」と思っていることと

実際にその人が子ども時代にどう生きていたのかは

全然異なるのだとドゥルーズは言ってます。

さて、

渡辺さんは

スピノザがナポリの革命家マザニエッロ(Masaniello)に扮した自画像を描いたという事実に注目しています。

マザニエッロはこの人ですね。

Philosophy Sells...But Who's Buying?

マザニエッロは猟師で、スペインによる課税、特に食料への課税に抗議して民衆と共にナポリで蜂起。

一時、スペインの総督を包囲するに至ります。

最終的にこの総督の密使によって暗殺されます。

どうやらスピノザは

この人物に惹かれていたようなんですね。

スピノザがマザニエッロに扮した自画像を描いたという事実は

コレルスの『スピノザの生涯』で紹介されています。

「彼〔スピノザ〕はインキか木炭で人を写生するために素描を学んだ。私〔コレルス〕は彼のこの技術になる小冊子をもっている。彼はその中で彼に面識があって、何かの機会に一度は彼を訪ねたことのある有名な種々の人物を描いている。その四枚目には、シャツを着て右肩に手編みをかけた一人の漁夫が描いてある。それは悪評の高いナポリの叛徒の首領マス・アニェロ(Mas Anjello)〔通称であるMasanielloはこの名前の縮約形〕が歴史画の中で描かれているのとそっくりである。それについてスピノザの最後の宿主、ヘンドリク・ファン・デル・スペイク氏は私にその人物はスピノザ自身によく似ている、彼はそれを確かに自分の顔をモデルにして描いたのであると言った。その中に描かれている他の著名な人々については、さしさわりがあるから言わないことにする。」

(リュカス、コレルス、『スピノザの生涯と精神』、渡辺義雄訳、学樹書院、pp.109-110)

スピノザの生涯と精神/渡辺 義雄

¥3,360

Amazon.co.jp

俺はあまりスピノザの伝記的な事実について詳しくないのですが、

今回この箇所を読み直してみて

自分がホントにいろいろ知らないなと実感。

まずですね、

この自画像というのは残っているんでしょうか???

そもそも

このコレルスが手にしたというスピノザの手によるスケッチブック、

これは残っているのか???

知らない。

もしかして、スピノザ研究者の間ではよく知られた事実だったりするんでしょうか???

誰か教えてください!

あと、

上の引用文、

ものすごい気になる一文で終わってますね。

「その中に描かれている他の著名な人々については、さしさわりがあるから言わないことにする」

おい!コレルス!

こういうことしないでくれよ!

教えてくれ!

いったい誰なんだろうか…。

これを書きながらちょっと調べたら、

やっぱりこのスケッチブックは見つかっていないようですね。

で、

おもしろい本を見つけました。

視覚論で有名なジョン・バージャー

彼が

『ベントーのスケッチブック』 という本を出しています。

つい最近。

Bento’s Sketchbook. John Berger/John Berger

¥2,753

Amazon.co.jp

「ベントー」とは

何を隠そう

スピノザのファーストネームです。

ヘブライ語で「バルーフBaruch」。

これは「祝福された者」という意味だそうです。

スピノザはユダヤ教会破門後は

それをラテン語に訳して「ベネディクトゥスBenedictus」とし、

それを使っていました。

で、

このファーストネーム

ポルトガル語では

「ベントーBento」になります。

バージャーのこの本は、

失われたスピノザのスケッチブックに思いをはせていた彼が

ある時に友人から新品のスケッチブックをもらい

そこで、

「ああ、これがベントー〔スピノザの〕スケッチブックだ!」

となんか思ってしまって書いた本だそうです。

手に取ってないんですが、

イラストと文からなる本みたいですね。

注文しました。

と、

ここまで書いて

なんか思い出した。

ドゥルーズの『スピノザ——実践の哲学』(平凡社ライブラリー)に

マザニエッロに似せたスピノザの自画像のことが書いてあったような…。

スピノザ―実践の哲学 (平凡社ライブラリー (440))/G.ドゥルーズ

¥1,365

Amazon.co.jp

書いてありました!

19ページです。

で、

そこに付された註(256ページの注4)では、

この失われた〝スピノザの自画像〟の複製が

アムステルダムの国立美術館に所蔵されている

版画ではないか、と

ドゥルーズは言っています。

アムステルダムの国立美術館とは

たぶんRijksmuseumのことだと思うんですが、

ここ、

俺はちょうど去年行ってきました。

けどそんなのあったっけな…。

見てくればよかった…。

さて、下の画像が

その版画です。

これはマザニエッロに似ているか!

Philosophy Sells...But Who's Buying?