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デリダ『マルクスと息子たち』、国際刑事裁判所

岩波モダンクラシックスというコレクションで、

俺が訳した

ジャック・デリダ著『マルクスと息子たち』が

再刊されます。

俺のところには、

今日、本が届いたのだけれど、

なんと、

もうアマゾンのサイトには

新しい装丁の写真が掲載されてて、

はやいなぁ、と。

アマゾンによると

10月6日発売とのこと。

好評(?!)予約受付中ですので

皆さん是非お買い求めください!

この本の翻訳と解説は

俺の最初の仕事で、

このことは前にこのブログでも書きました(ここ )。

で、

俺が書いた巻末の解説は、

後期の、

政治的発言を繰り返すようになったデリダについては、

よく参照される参考文献になっているようです。

この本が最初に岩波書店から発売されたのは2004年1月のことですが、

この解説分は、当時、

俺が毎週参加していた

デリダの授業で考えたことをまとめあげたものでもあり、

単に、

『マルクスと息子たち』、そしてその前提である『マルクスの亡霊たち』

をわかりやすく説明しただけのものではありません。

その意味で、

俺としても、

それなりに有意義な文章であろう

と思っている次第。

俺自身は当時からいろいろ考えも変わってきたけれど、

これを読み返すと、

それなりに納得する部分が多くあります。

さて、

今回、

モダンクラシックス収録にあたって

訂正したのは

一ヵ所です。

219ページ、中ほど。

次の部分です。

「またデリダは、国際刑事裁判所(アメリカ合衆国が最後までその創設に反対し、結局、同裁判所に対し合衆国国民に裁判を免れる権利を認めさせたのは記憶に新しいところだ。日本も条約を批准していない)にも言及しており、「国際刑事裁判所の苦労に充ちた〔laborieuse〕創設」【注27】という言い方でこの新しい裁判所に対して一定の理解を示してはいるのだが、しかし、それが「人権宣言」を参照することで国民国家の主権に対して制限を加えようとしていることには懐疑的な態度を見せている。」

ここの、日本についての言及の後で、次の一文を挿入しました。

「二〇一〇年十月追記:日本はその後、二〇〇七年十月に一〇五番目の加盟国となった」

そうなんですね。

2007年に、

ついに日本も

条約を批准したんです。

これはとても大切なことです。

国際刑事裁判所(ICC)について少しだけ解説。

国際司法裁判所(ICJ)というのが別にありますが、

これはあくまでも国家と国家の法的紛争を扱う裁判所で、全く別のもの。

国際刑事裁判所は、

集団殺戮・レイプなど、

戦争犯罪を犯した

個人

を裁く裁判所です。

対象は非常に限定されていますが、

個人の犯罪を国際的に裁く

裁判所であるわけです。

これは

法の支配の国際化を意味します。

個人を裁く法はこれまで

一国内に限定されていました。

それが変化しつつあるということです。

全く新しい事態です。

もちろん

多大な課題を抱えています。

法の支配は

それを支える暴力と切り離せない。

今までは一国内だから、

それが可能であった。

では国際的はどうなのか?

法の支配が国際化したとき

その法を支える暴力とはいかなるものか?

まだ答えは出ませんが、

ICCの設立は人類の進歩になるやもしれぬ

重要な一歩でしょう。

さて、

この重要な機関を認める条約に日本は加盟していなかったんですね。

いまでも

アメリカ合衆国、ロシア、中国、インドなんかは

参加していません。

日本もそのまま米国追随かと思いましたけど、

きちんと加盟してくれました。

2007年秋には、

斎賀富美子さんが、

日本初のICC裁判官に選ばれています。

あと、

俺の知っている限りだと、

池田暁子さんという検察官(1971年生まれ、若い!)

が、

法務省からICCに派遣されています。

けっこう貢献しているんですね、日本も。

さて、

この機関の重要性を認めた上で、

先の引用で紹介した

ICCに対するデリダの立場というものを考えてみる必要がある

と思います。

デリダは、

人権宣言を参照することで国家主権に制限を加えようとするのは感心できない

と言っているわけですね。

デリダは人権という抽象的なものを決して信じていない。

俺もデリダと同じ立場ですけど。

ドゥルーズも

人権などという抽象的なものを参照しても何もできない

と『アベセデール』のどこかで言っています。

とはいえ、

こういう機関の設立は大切なことですので、

複眼的に事態を見ていく必要があるということでしょう。

まぁ、

こういうことも解説してますので、

関心がある方は

是非この機会にご購入ください!