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フロイトを読むことは許されるか

岩波書店で刊行中の『フロイト全集』の月報のために短文をしたためたのですが、それが校了したとの連絡をいただきました。今月25日に発売の第19巻に挟まれています。

月報の文というと決して長いものではありませんが、これはずいぶんと時間をかけて書きました。

最初に書いたのは二年以上前であった気がする。

担当の編集者の方に細かくご指導いただきながら、何度も書き直して今の形になりました。

問題として取り上げているのは、素人がおもしろがってフロイトを読むというのは倫理的に許されるのかという問題です。

精神分析が精神疾患に苦しんでいる患者を救うために作り上げられた理論だとすると、それを素人がおもしろ半分に読むのは倫理的に問題があるのではないかということです。

実のところ、この疑問があって、俺は長らくフロイトを読めませんでした。

それが一転したのは、パリでデリダの授業に出たのがきっかけです。

デリダのフロイト読解を知るにつれ、どうも俺の抱いていたフロイト精神分析像は間違っていたかも知れないという気になったのです。

で、『フロイト著作集』(人文書院)を全巻そろえて、読みあさった。

なんといいますか、いろいろと人生観変わりましたね。フロイトにはそれぐらいインパクトがあります。

でも最初の疑問は簡単には消えず、俺の中で保持されていたのですが、それを打ち破るきっかけになったのが、「素人分析の問題」というフロイトの文章でした。

今回の月報でもこの文章を論じています。ちょうど、「素人分析」の巻に付属する月報に掲載していただくことができました。

「素人分析」は本当におもしろいです。おもしろいだけじゃなくて、精神分析を知らない人への説明という形をとっているので、フロイト精神分析入門としても読めます。お勧めです。

なお、昨年出た『フロイト全集』第12巻「トーテムとタブー」の月報には、俺の訳でジャン・リュック=ナンシーの文章が掲載されています。

フロイト全集〈12〉1912‐1913年―トーテムとタブー/著者不明

¥4,620

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これは、わざわざナンシーにメール書いて俺が頼んだものです。

拝啓ナンシー様
……
いま日本のイワナミショテンで『フロイト全集』が刊行中でございます…
日本の出版界にはゲッポウという習慣がございまして……
お書きいただく文は、ゲッポウが挟まれる巻と内容的に関係がなくても構いません……
……

こんな感じでした。

ナンシーは理解してくれた。

俺は、1997年に初めてフランスに留学、ストラスブールに滞在した際、ナンシーに指導教官を頼んでOKももらったのだけれど、現地にいったらナンシーが心臓の大手術をした後で、一年の滞在の間、一回も会えなかったという経験があります。

今回はきちんと頼んだら文章を送ってもらえたという訳です。