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哲学と就職

高崎経済大学のゼミで「哲学の闘い」というトークイベントを開催したことを先に書いた。内容もすばらしかったし、新入生歓迎講演会という意味でも大成功であったと思う。

俺はあのイベントの運営をほぼすべてゼミ生に任せた。イベントの運営を実体験し、仕事をするということについてのイメージをもってもらうのが一つの狙い。

一プロジェクトを責任もって企画し、やり遂げるというのは、バイトで仕事をするのとは違う。俺は大学生の時に三つこのようなイベントを有志でやったけど、自分の仕事が一つ間違えば、イベント自体が開催できないという事態にもなりかねないことを肌身で感じた。

学生にもそういう責任感を学んで欲しかった。とはいえ、試練を与えるつもりはないので、そうやって責任もってイベントをやり遂げた達成感を何かの糧にして欲しかったというわけ。

俺のゼミは当然哲学のゼミだが、いま目指しているのは「哲学のゼミだけれど、就職がすごい」というゼミ。

哲学は世の中にでて役に立たないと思っている人が多い。また逆に教える側では、世の中に出てから役に立つとかそういうことを考えるようになったら哲学は終わりだと思っている人も多い。

たとえばカントはこの両方の考えを否定した。カントは実学としての哲学を考えていた。『純粋理性批判』には、哲学の「学校概念」と「世間概念」という区別が出てくるが、上の考えはどちらも哲学の「学校概念」に依拠していると言えようか。

(詳しくは坂部恵の名著『理性の不安——カント哲学の生成と構造』勁草書房の第一章第三節あたりを参照してください)。

理性の不安―カント哲学の生成と構造/坂部 恵

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哲学は概念によって思考する。だから、概念を捉える作業が重要になる。これには訓練が必要。

概念は複数の要素からなっている。それらの要素は、そこにそのまま書かれているわけではない。定義の中にすべての要素が現れることもない。

たとえば自然状態という概念だったら、ホッブズとルソーでは全然違う。ホッブズの自然状態の概念と、ルソーの自然状態の概念を理解するためには、テクストを読んだ上で、そこから、概念を構成する複数の要素の関係をつかみ取らねばならない。

このような要素の関係をつかみ取るという作業ができるようになると、様々な場面でいろいろ楽になる。

或る人の考えの骨格をつかみ取ることができるようになる。したがって、人の話を聞くのが楽になる。

人の話を聞くのが楽になるということは、その人に対する判断の的確さが増すということだ。

また、要素の関係をつかみ取ることができるようになれば、うまく人に話すこともできるようになる。

話が行ったり来たりして要領を得ないのは、要素は頭に入っているが、それらの関係がつかみ取れていないから。

したがって、哲学の勉強において訓練される能力は、話を聞いたり、自分で話をしたりするときにとても役にたつ。

仕事をする上で、あるいは仕事に就くために就職活動をする上で、この能力が役に立たたないはずがない。

というわけで、ゼミ生の皆さん、就職活動頑張ってください。