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高崎経済大学学生用、夏の推薦図書(再掲)

うちの大学では

教員が毎年三冊推薦図書を掲げるんですが、

結構提出を忘れている先生も。

ってわけで、

じゃあ、俺がたくさん出しますよ

ということで、

昨年たくさん出させてもらったのが、これ。

先のエントリーと重なるのもありますが、

コメントだけでも参考にしていただければ。

繰り返しますが、

夏休みですので、

みんなで本を読みましょう!

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推薦図書

國分功一郎

【自然科学】

チャールズ・ダーウィン、『種の起原』、上下巻、岩波文庫

# ISBN-10: 4003391241

# ISBN-13: 978-4003391242

# ISBN-10: 400339125X

# ISBN-13: 978-4003391259

有名な本ほど読まれない。この本はその代表。でも手に取ってみたら、ダーウィンの文章の読みやすさに驚くはず。各章の独立性が高いので、好きなところから読み始められます。第七章「本能」あたりから読み始めるとよいかも。本能の変化。奴隷を作るアリ。驚きの連続です。

ユクスキュル、『生物から見た世界』、岩波文庫

ISBN-10: 4003394313

ISBN-13: 978-4003394311

あらゆる生物がそれぞれの主観的世界を生きているという「環世界」論を提唱した書物。たとえば、ダニは、酪酸の臭い、37℃の温度、毛のない皮膚、この三つのシグナルだけから成る世界を生きている。驚くべきは各生物の感覚する「瞬間」が異なるということ。人間にとっての「瞬間」は18分の1秒。どういうことか? 気になる人は実際に本を読んでください。

【思想・哲学】

ミシェル・フーコー、『監獄の誕生』、新潮社

ISBN-10: 4105067036

ISBN-13: 978-4105067038

難解で知られるフランス現代思想の中で読みやすいものをあげるならこれ。権力のイメージを一新した記念碑的著作。権力が前科者をどう生み出し、どう利用しているのかを描いた第四部第二章は衝撃的。社会をシステムとして見ることの重要性を教えてくれます。ちなみに、冒頭部に描かれる十八世紀の処刑のシーンは、第一級のホラー小説。

ジル・ドゥルーズ、『スピノザ——実践の哲学』、平凡社ライブラリー

ISBN-10: 4582764401

ISBN-13: 978-4582764406

ジル・ドゥルーズの本としても、スピノザ哲学の入門書としても、最高の書物。何度読んだか分かりません。翻訳もすばらしい。難しいところもあると思いますが、まずは第一章と第二章だけでも。物事の見方が変わると思います。「事物も行為も、それ自体としてみれば、いいもわるいもない」。では、いいとわるいをどう定義するか?

ジークムント・フロイト、『あるヒステリー分析の断片』、ちくま学芸文庫

# ISBN-10: 4480089845

# ISBN-13: 978-4480089847

授業で紹介したら、「昼ドラみたいなドロドロ話」という感想があった。フロイトはどこから読み始めてもいいけれど、まずはこういう実話の分析を読むのもいいかもしれない。関心をもてた人は、ぜひ他の著作を。フロイトの著作はハズレなし。彼が書いたものは全部おもしろい。

ルソー、『人間不平等起源論』、中公文庫

# ISBN-10: 4122000696

# ISBN-13: 978-4122000698 

ルソーは自然人を善良なもののように描いているけれども、別に性善説ではない。自然状態では、邪悪なことができる客観的条件がそろっていないということ。たとえば、所有という考えがなければ、人にものを盗まれても、それは川にものを落としたのと同じことです。だから恨みも発生しえない。有名な『社会契約論』より、こっちの方がおもしろい。

ホッブズ、『リヴァイアサン』、第一、二、三、四分冊、岩波文庫

ISBN-10: 4003400410

ISBN-13: 978-4003400418

ISBN-10: 4003400429

ISBN-13: 978-4003400425

ISBN-10: 4003400437

ISBN-13: 978-4003400432

ISBN-10: 4003400445

ISBN-13: 978-4003400449

近代の政治理論の起源。ホッブズのリアルなセンスは、今でも多くのことを教えてくれます。ただ、最初から読み始めると、冗長に感じるかも。さしあたっては、第一部第十四章の「自然法」の話から読み始めるのがよいでしょう。この本によって、lawとrightが区別されるようになりました。でも、両者が区別されていなかったとはどういうことでしょうか?

プラトン、『国家』上・下巻、岩波文庫

# ISBN-10: 4003360176

# ISBN-13: 978-4003360170

# ISBN-10: 4003360184

# ISBN-13: 978-4003360187

少々乱暴に言えば、プラトンの政治学は、大衆社会の政治学。しかもプラトンは大衆が大嫌い。大衆社会が極限まで来ている現代社会を考える上で必読でしょう。また、ハヴロックという研究者が指摘していますが、この本は政治学であると同時に教育学です。有名な「洞窟の譬喩」の教えるところは、いまでも教育を考える上で役に立つはずです。

【経済】

『資本論』(世界の名著54、55、マルクス・エンゲルスI、II)、鈴木鴻一郎編集

ISBN-10: 4124006640

ISBN-13: 978-4124006643

ISBN-10: 4124006659

ISBN-13: 978-4124006650

高崎“経済”大学の学生なのだから、やはり読んでおきたい。でも、全三巻。文庫なら九冊。長い…。そういう人には、この鈴木鴻一郎編集の『資本論』がおすすめ。理論だけがうまくピックアップされて、大著の全貌が見渡せるようになっています。これならなんとか夏休み中に通読できる。マルクスの嫌み・悪口・皮肉に大笑いしながら読んでください。

『ミシェル・フーコー講義集成〈8〉生政治の誕生』(コレージュ・ド・フランス講義1978-79) 、筑摩書房

ISBN-10: 4480790489

ISBN-13: 978-4480790484

よく耳にする「新自由主義(ネオリベラリズム)」という言葉。でも、これをきちんと説明している本はほとんどない。この本は30年も前に行われた講義の記録ですが、フーコーは既にそれを明確に定義しています。曰く、新自由主義は自由主義が復活したものではない。では両者の違いとは? 1979年2月7日の講義を熟読するところから始めるのがおすすめ。

【人類学】

西田正規、『人類史のなかの定住革命』、講談社学術文庫

# ISBN-10: 4061598082

# ISBN-13: 978-4061598089

人間が定住を始めたのはたかだか一万年ほどまえのこと。人類はそれまでずっと遊動生活を送ってきた。人間は〈住む〉のが当たり前だと僕らは思っているけれども、実は、遊動生活を送るほうが実はずっと性に合っているのかも。だって、ゴミのことも、トイレのことも気にしなくていい。退屈な日常に悩まされることもない。

【宗教・聖書学】

『創世記』、関根正雄訳、岩波文庫

ISBN-10: 4003380118

ISBN-13: 978-4003380116

聖書は一冊の書物。その意味でこの図書館にあるどの書物とも変わらない。聖書は読むことができる。読むなら岩波文庫収録の翻訳がおすすめ。関根正雄は、訳文もいいけど、注が破天荒におもしろい! たとえば「アダム」は固有名詞だと思われているけれど、これはヘブライ語で「人」を意味する一般名詞である等々。

田川建三、『イエスという男』、作品社

ISBN-10: 4878936819

ISBN-13: 978-4878936814

まず、イエスとキリストを別々に考えること。イエスは一人の男です。彼が当時の支配体制とどう戦い、どう死んだのか。その死がどう解釈され、どう利用されたのか。イエスの「逆説的反抗」を通じてこれらの問いに答えていく田川氏の筆は実にスリリング。キリスト教を作ったのはイエスではありません。「善きサマリア人の譬え」の解釈は何度読んでも感動。

【日本の政治】

丸山真男、『現代政治の思想と行動』(新装版)、未来社

# ISBN-10: 462430103X

# ISBN-13: 978-4624301033

日本の支配機構を「無責任の体系」として描き出したことであまりにも有名な本。個人的には、日本兵の心の有り様を言い当てた「小心翼々」という四字熟語がとても印象に残っている。丸山は現在再評価の気運が高まっていますが、まずはこれを読まないと。日本政治を考える上での必読書。

大川周明、『復興亜細亜の諸問題』、中公文庫

ISBN-10: 4122019923

ISBN-13: 978-4122019928

大戦後、民間人としてはただ一人、A級戦犯として起訴。裁判中、前に座っている東条英機の頭をぶん殴ったりして裁判を免れたという逸話あり。コーランの全訳でも有名。いまとは違い、戦前は、右翼の思想家の中にも壮大な構想を抱いていた人がいた。それを知っておくことは重要。彼はアジア諸国の連繋を考えていました。

『石橋湛山評論集』、岩波文庫

ISBN-10: 4003316819

ISBN-13: 978-4003316818

湛山が戦時下も自由主義者であり続けたのは有名。彼の小日本主義は、いまこそ見直す必要がある。驚くべきは、かつての日本では、こういう知性の持ち主が政治家になれたということ。学者もたじたじの論陣を張れる人が、政治家で、しかも首相にもなった。いまの政治家はこのような文章を書くことはおろか、読むことすらできるのだろうかと思わずにはいられない。

中江兆民、『三酔人経綸問答』、岩波文庫

ISBN-10: 4003311019

ISBN-13: 978-4003311011

この本を学生に読ませる教員が増えているらしい。現在の日本の政治が完全に崩壊しているからでしょうか。今も昔も政治が直面する問題が変わっていないことがこの本を読むとよく分かります。三人の討論という形で戯曲のように書かれているので、読みやすいでしょう。たとえばあなたなら「豪傑君」の考えにどう答えるか?