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De lijken van de gebroeders de Witt

いまスピノザについて書いた博論を鋭意書き直し中です。

まぁいい感じで進んでます。

俺の博論は、

スピノザの著作の中から

『エチカ』を取り上げるというのは当然なんですが、

『知性改善論』と『デカルトの哲学原理』に焦点を絞って論じています。

特に『デカルトの哲学原理』という本は本当に研究されていなくて、

おそらく俺の著作がこれを大々的に論じた(世界的に!)はじめてのものになるでしょう。

そして、

『デカルトの哲学原理』はめっちゃおもしろい!

なんでみなさんこれを研究してこなかったんですか!?

ってか、それが研究されてこなかった理由についても論じているんですけどね。

これはスピノザが書いたデカルト哲学の入門書みたいなものです。

おもしろいですよね、

あの時期、こういう本を出した人は有名哲学者にはいません。

しかもその第一部なんか、

二週間ぐらいで書いたらしいんです。

すごいぞ、

スピノザ!




関心ある方は是非、『知性改善論』と『デカルトの哲学原理』と『エチカ』を読んで予習しておいてください!

知性改善論 (岩波文庫)/スピノザ

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デカルトの哲学原理―附 形而上学的思想 (岩波文庫)/スピノザ

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さて

この前アムステルダムに行ったとき、

Rijksmuseumというところに行ったんですが

その時に衝撃的な絵と出会いました。





一七世紀のオランダに

ヨハン・デ・ウィットという政治指導者がいました。

スピノザの研究をしているというのに俺は当時のオランダの歴史について疎いのですが

対英戦争を外交で終結させ、財政を再建し、商工業を興し、貿易を盛んにし、言論の自由を大切にし…という当時のオランダの全盛時代を作ったひととのことです。

この人がスピノザと知り合いだったのですね。

見識も学もあるひとだったので、強い信頼関係があったようです。

デ・ウィットもスピノザに政治問題について相談したということもあったらしい。




当時のオランダでは

カルヴァン派が戦争政策を主張し、オランイェ家の中央集権国家形成という政治的野心とこれが結びついていた。

共和派は平和政策を主張していたけれど、民衆はカルヴァン派やオランイェ家を支持。

デ・ウィットはさっき書いたみたいにいろいろやりましたが、そもそも共和制が民衆に受け入れられていなかったらしいです。





デ・ウィットという人は数学者でもあったらしく

デカルトの『幾何学』を翻訳したりしている。

その才能が財政とかに役だったようです。

ドゥルーズは
「ヤン・デ・ウィットは、君主制による感情任せの好戦的な国家経営に反対して、自然的かつ幾何学的な方法にもとづいた共和制による国家形成を唱えている」
と書いています(『スピノザ——実践の哲学』、平凡社ライブラリー、p.22)。





ところがこの人が

政治的対立の中で

虐殺されてしまいます。

1672年のことです。

英蘭戦争と海上封鎖で経済ががたがたになり、そもそも共和制に懐疑的だった民衆が暴徒と化して、兄のコルネリスと一緒に彼を殺すんですね。




で、

この話は知っていたんですが、

この殺された二人の死体を描いた絵が、

先の美術館にあったんです。

Jan de Baenという人の

De lijken van de gebroeders de Witt
(The corpses of the de Witt brothers)

という絵です。

正直言って

血とかそういうのが苦手な人にはお勧めできない絵です(俺も苦手な方なので、ちょっとたじろぎました。)

でも、どうやら本当に死体はこんな風にされたようです。

※その絵はこのエントリーの一番最後に載せておきますので、怖い人は見ないでください。





いつも怒らないスピノザが

この事件で激怒したというのも有名な話です。





「なぜ民衆は隷従こそが自由であるかのように、隷従を求めて闘うのか?」

というのがスピノザの『神学政治論』の中心的な問いですが、

こういう事件が起こることを予測していたかのように、1670年に出版されています。

そして、激しく非難されたんですね。





俺にはまだ『神学政治論』は扱いきれません。

だが、何としてでもこれに取り組まないといけないと思っています。




血なまぐさい話だったので、

最後に別の絵の話。

もう一つ関心をもった絵が同じ美術館にありました。

Nicolaes Maesという人の

Old Woman at Prayer(1656)という絵です。


Philosophy Sells...But Who's Buying?



食事を前にして老女が祈りを捧げている。

それがなんともいえない独特な雰囲気をもっている。

俺が関心をもったのは、何よりそこに並んでいる食べ物。

スープ、パン、バター、サーモン、そして飲み物はビールだそうです。

一七世紀オランダではそういう食事をしていたのかと思った次第。

スピノザもこういうものを食べていたのだろうか。

当時はビールは「健康によい飲み物」だったらしいですね。




Jan de Baen- De lijken van de gebroeders de Witt

(1672-1702)

Philosophy Sells...But Who's Buying?